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▼撮影情報:Nikon D4s | AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED | f4.0 | 1/40 sec | ISO 1000

門井慶喜による『家康、江戸を建てる』は直木賞にノミネートされた小説である。低湿地帯だった関東平野と東京は、いまや世界に輝く大都市となった。その根幹を作った家康と全国から集まった職人たち。この小説を現代風にいえば「プロジェクトX~挑戦者たち~」に近いものがある。

ときは天正18年(1590年)小田原攻めの折、秀吉より、功に報い北条の旧領である関東八か国、計240万石をそっくり差し上げよう、代わりに現所領の駿河・遠江・三河・甲斐・信濃を全てを手放せと言われた家康。決して等価交換の取引ではない、家康の圧倒的不利。しかし家康はこの国替えに応じた。

そして家康は国家プロジェクトとして川を曲げて治水し、海を埋め立て、飲料を引き込み、貨幣を流通させて、そして天守閣を築いた。江戸のインフラ整備に取り組んだ徳川CEOの先見の明もあるが、なにより各事業責任者や職人たちの熱意には脱帽である。武将ではない職人たちに焦点があたっているのが本書の新しさ。直木賞候補作である。

その当時、雨が降ったら傘をさせばいい時代ではない。江戸は洪水と川の氾濫によって人が住める場所ではなかった。そこで世にいう「利根川の東遷、荒川の西遷」とよばれる大事業を行う。つまりは、河川の付替え、川の流れを人工的に変える事業を成し遂げた。

パクス・トクガワーナの基礎である。